ということで、今回の旅では、五木さんが若手作家であったときに通っていたという喫茶店、『純喫茶 ローレンス』と、五木さんに関する展示がある『金沢文芸館』に行ってきました。
■純喫茶 ローレンス
まずは、純喫茶ローレンス。
五木さんが直木賞を受賞した「蒼ざめた馬を見よ」はこの喫茶店で執筆された物で、受賞の知らせを受けたのもこのお店でだったとか。
下調べでは「わかりにくい場所にある」というようなことを掴んでいたのですが、意外とすんなり見つけることができました。

↑大通りから一歩入ったところで目に入ってきた看板。
お店は老朽化したビルの3階にあるのですが、階段を上っていくと、なんだか普通ではない雰囲気が漂ってきて、ドアの前に立ったときには、「どうしよう、入ろうかな・・・」と一瞬躊躇してしまいました。

よし、とドアを開けると、カランコロンカランと鐘の音。
お店の人はいずこに?と中へ入っていくと、店主の姿が。
今まで言った経験のない感じの喫茶店で、なんだか一人でスーッと入っていって好きなところに座るのがためらわれてしまいました。
「あ・・・あのぉ、どこに座ればいいですか?」
と訊ねると、「それはもうどこでも、お好きなところに」と言われ、僕が観光客だったことを知って、五木さんの指定席を教えてくれました。
ラッキーなことに誰も座っていなかったので、五木さんの座っていたイスに。

僕が席に座ると、マスターさんは、店に訪れた有名人の写真などが入ったアルバムを見せてくれました。僕が存じ上げたのは、田中邦衛といしだあゆみぐらいでした。写真の田中邦衛の若いこと!
あともちろん五木さんの写真もありました。
マスターによると、五木さんは若い頃に毎日のように来ては、コーヒー1杯を頼み、ほとんど自分の部屋のように一日中過ごしていたみたいです。
失敗した原稿を丸めて床に落としたものを、マスターの親が拾ってゴミ箱に捨てていたのだとか。
コーヒー1杯で長い時間過ごせるのには訳があって、ここのお店のコーヒーカップはサイズがでかいのです。実際に見せてもらいましたが確かに大きかったです。
ちなみに、僕はアイスコーヒーを頼んだのでグラスで。
「ホットコーヒー以外はコーヒーではない!」と言われましたが、外を歩き回って暑くて仕方なかったので、そこは負けじと「アイスコーヒーください」と注文。

店内には絵が飾ってあるのですが、それはマスターが書いたものだそうで、現在、どこかから展示する作品を依頼されており、製作中らしいです。
外から見えた螺旋階段は、アトリエに続く階段とのことでした。なるほど、僕はあれも上るのかと思ってました。
独特の雰囲気の店内にいると、日常とは違った気分になれました。
「いつまで続けられるか」みたいなことを言っていたけど、また行くときまで頑張って欲しいなぁ。
旅のいい思い出が出来た喫茶店でございました。
いろいろと話を聞いていて、はじめて「旅行っていいもんだな」と思えました。

■金沢文芸館
http://www2.spacelan.ne.jp/~bungeikan/
さて、五木さん関係の場所でもう一箇所、僕が訪ねたところが、金沢文芸館。
ここには、五木さんに関する展示があるとのことなので行くことにしました。

観覧料はたったの100円。五木さんの展示は2階にあります。作品を書き上げる際のメモ書きや、実物の原稿などがあって、じっくり見てきました。
雑誌の連載の出来上がり方なども「ほうほう」と関心してしまいました。編集の人と五木さんのやり取りが行われているFAX用紙とかがあるんですよ。
「字数オーバーです」とか「ここ直しておきましたがいいですか?」みたいなやりとり。
出版の裏側を見たっていう感じでした。
あとは、『GIブルース』と『蓮如』(だったかな?)の原稿が展示されているのですが、学芸員の方に言われて、若い頃に書かれた『GIブルース』と、最近書かれた『蓮如』の原稿を見比べてみたら、文字が随分と違うんですね。
前者は生真面目で、マスの中にちょっこりとある感じ、字も整頓されていて綺麗。
しかし後者になると、マスをいっぱいに使って、字体はなんだかウニョウニョ。
あれを読む出版社の人は大変だろうな。
どこかで見覚えがあるなぁと思ったら、僕のお祖父ちゃんの字によく似てました。(←どうでもいい情報)
他には、五木さんと著名人の写真とか、奥様の書いた装丁の絵だとかも飾られていました。
2階にはノートが置いてあって、来館した人が感想なんかを書くことができるようになっていました。
係りの人に「五木さんも来たときに目をお通しになるんですよ、是非何か。」と言われ、「ウッー」と悩んだ挙句、僕が書いたのは「純喫茶ローレンスにも行ってきました。いい思い出ができました。」とか何とか。
よく考えたら、文芸館の感想とか一切書いてないんだけど、あれで良かったのかなぁ・・・。
(しかも何だか下手な文章。)

写真は3階のフロア。
泉鏡花文学賞&金沢市民文学賞の受賞作品が揃っています。

↑泉鏡花文学賞・選考委員の面々。

↑泉水鏡花文学賞の受賞作品が展示されているコーナーにまだ埋まっていない本棚があるので近づいてみると・・・(右の画像を参照)。素敵な演出ですね。
この文芸館は建築物としても貴重なもので、元は銀行だったそうです。
1階の奥にあるのは、かつて金庫として使われていたスペースだと係りの人が教えてくれました。

平日だったからか、ほぼ貸切状態でしたし、館内も落ち着いているので、五木寛之が好きな人間にとっては、楽しい時間が過ごせました。


