新潮文庫(ほ-4-46)
ISBN:4-10-109846-8
発行:1993/11
悪夢だと思いたい、信じられないような出来事。特殊な能力をもった青年の巧妙なビジネス。絶体絶命の危機から目覚めさせてくれる救いの声。満開の桜の季節に出会った秘密好きの美しい女―。
想像もつかないことが現実となってしまう未来社会を、あなたものぞいてみませんか? 技術と文明がもたらす21世紀社会のゆがみを見通して、痛烈な風刺で描きだしたショートショート21編。
最近になって、中学・高校生以来、久しぶりに小説を読み始めた僕は、「ショートショートっていうのがある」ということはなんとなく知っていたものの、それがどんなものかは全く知りませんでした。
ならば、読んでみよう。ということで、たまたま名前を知っていた星新一のショートショートが収められた本を適当に選んで買って、読んでみました。
ショートショートと「ショート」が2回もあるだけあって本当に短い。(そういう意味で良いんですよね・・・)
ひとつの話が大体5ページぐらいしかないんですね。
「これは、通学途中の電車の中や、大学の空き時間に読むのに丁度いい」ということで、手元に置いておいて暇なときにちょっとずつ読みました。
最近、阿刀田高の短編を読むのが好きで、星新一のこの本と併読していたので、どうしてもこちらの本を読むときにも「どんなオチであっといわせてくれるんだろう!?」という期待をもって読んだのですが、そういうものじゃないんですね、ショートショートって。
あんまり「どうなる、どうなる」と推測しながら読むよりも本当に肩肘を張らずに、気楽に、読むような姿勢のほうが良いということに途中で気づいたのですが、それに気づいたのはもうほとんどの作品を読んでからでした・・・。
今NHKで星新一のショートショート作品を映像化したものを深夜とかでちょこっとずつ放送しているんですよね。10分くらいのミニ番組なのですが、それを偶然見たときに、「ああ、そうか、こんな風でいいのか」と気づきました。
星新一自身は「自分の作品が映像化されることはあまり望ましいことではない」というようなことを生前言っていたらしいですが、NHKで放送しているのは僕的にはかなり良いです。
むしろあれを見てこの人の作品の本質がすこしわかった気がしました。いっちょまえなことを言ってしまいましたが、作品の持つ独特の雰囲気というのがよく現れていると思うんですよね。
まるで感情の起伏というものを感じさせない星新一の文体はとても平易で、読みやすいのですが、なにぶん彼の作品への接し方が最初はあまりわからなかったので、どうしてもいまひとつ話の世界に入っていけないもどかしさがあったのですが、だとしても、楽しめる作品はいくつかありました。
たとえば、『安全な生活』というショートショート。
「言葉には出さないけれど、自分の頭の中で考えていること」
これは誰しもが抱えているものですが、実はその中身ってものすごくめちゃくちゃですよね。
もうなんでもかんでもありすぎて言葉にするのすら難しい。もしくは言葉にしたとしても意味すら通らないなんてこともありそうです。意識している部分でもそんな風なのだから、無意識の部分ともなるともっと奇妙だったり、面白かったりするのでしょう。
星新一の作品を読んでいて、この作家はそうした人間の隠れている、意識下にある、ぼやけた物事を作品として表現しているのかな? となんとなく感じたのですが、
この作品はまさにそんな印象を受けました。
というこんな話です。危険(事件)を避けて安全を求め続けていた男が、あるとき、外に出ようとすると、あまりに男に避けられたので事件のほうも男に寄り付かなくなってしまった。
こんなの実際あるかも・・・・それに気づかないだけで。
一番印象に残ったのは『木の下での修行』という作品。
僕はこの本の中ではこれが一番好きかな。
世の中の原理や法則というのを感じさせてくれる作品です。他の作品も実はそういう意味が込められている話が多いのかもしれない。
最後のほうになってショートショート(星新一)の読み方が少しわかったので、もう1冊読んでみたいです。そういえば、阿刀田さんもショートショートを書いているけど、彼はどんな作品を書いているんだろうか。やっぱりユーモアのあるものが多いんでしょうか、これも読んでみるとしよう。


