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藤田晋 「渋谷ではたらく社長の告白」


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 幻冬舎文庫(ふ‐15‐1)
 ISBN:978-4-344-40999-6
 発行:2007/08/10


史上最年少の上場、ネットバブル崩壊による苦悩の日々、企業パートナーとの出会いと別れ、女優・奥菜恵との結婚、IT経営者たちとのエピソード…。サイバーエージェントの社長である著者が綴ったノンフィクション。



ちょっと前に読んだ本ですが、なかなかスリリングでもあり、考えさせられる本でもありました。
この本は、藤田社長が幼少時代の記憶から始まって会社を興し、発展させるまでの話を自身で振り返る自伝的な本です。

「21世紀を代表する会社をつくる」という夢のために彼は友達を裏切ったことをこの本の中で綴っています。僕は何年か前に一度だけ、大学在学中に起業して会社を経営をしている学生の人と話したことがあります。

「前、ライブドアの堀江さんの本を読んだら、会社を創業した仲間は一人を残してみんな去っていくって書いてあったんだけど、やっぱりそうなんですか?」
そう聞くとその人は「うん、そうだよ」と言いました。
「自分だったらこうやるのに・・・」っていう思いを抱いてみんな会社をやめていくのだそうです。

たしか堀江さんは「だから友達を創業者グループには入れないほうがいい。単に社員が減るだけではなく大切な友人と別れることになるんだから」というようなことを自著に書いていた気がする。

藤田氏は友人を裏切っても自分の夢を叶えたかったのです。
夢を追いかけることって実はこういう一面だって含み持っているんだよな。そんなことを僕は思いました。


そうして興した企業を彼は少ない社員とともに毎日寝ずに働いて会社を大きくさせていきました。その頃は週110時間(=1日に約15時間)ほど働いていたと書いています。
サイバーエージェントはネットバブルの波に乗り彼は26才という若さで株式上場をするまでに至ります。

しかし、その後、ご存知のように市場のITへの過剰な期待は急激にしぼんでいきます。このネットバブルの崩壊は藤田氏にとって本当に苦しい時期であったということが本を読むと伝わってきます。

以前はさかんにIT企業を持ち上げていたマスコミは態度を変えてIT関係の企業に集中砲火を浴びせます。ネットの掲示板では誹謗中傷の嵐で、その中にはおそらく社員が書いているのだと思われる書き込みまであって、そのときはさすがに疑心暗鬼になったそうです。

一時は会社の身売りも考えたそうですが、それでも彼は周りの人から叱咤激励を受けて会社を存続させ、のちにバブルの傷跡から立ち直り、株価も回復するに至りました。


「記憶が鮮明なうちに書いた」というとおり、数々の濃い体験を読みやすいテンポでトントンと書き進められているので、300ページほどある文章が一気に読めてしまいました。
藤田氏は(文庫版の)あとがきで、幻冬舎の見城徹氏から「これは文学だ」と言われたことが嬉しかったというエピソードを紹介しています。

うんうん、たしかに。

自分の目標のために奮闘してきた彼の人生を綴った本書には、その過程における、尊敬する人たちとの出会い、友人との別れ、絶望、挫折、復活、おまけに結婚(結局別れちゃったけど)まで書かれており、これはまさにひとつのドラマであり、文学であるとも言える。
それを短期間に集中して体験してしまうあたりがやはり流れの速いネットの世界に住む人間だからなのかなぁと考えてしまう。

本書にはUSENの宇野さん、GMOの熊谷さん、楽天の三木谷さん、それから堀江さんまで、IT関係の企業人で名の知れている人達が登場します。なるほど、この人達ってこういう風に繋がっていたのか。そんなこともわかって人間関係の不思議さというか、人と人との出会いについて考えされられました。


僕が一番印象に残っている部分は、会社を興した藤田氏にUSEN(当時はインテリジェンス)の宇野さんが言った「日本は嫉妬社会だからな」という言葉。
あまり派手なこと(フェラーリを買ったり、馬を買ったり)をして周りから反発を食らわないようにと忠告したときのことです。これは・・・至言ではないかと。

よくIT企業で急成長している会社のトップに対して「楽に稼いでる」とか、「昔は汗水たらして云々─」と言って目の敵にしているような人がいます。
藤田氏は前述したように週に110時間働いていたのだそうです。それで上場してお金を手に入れたら、それは「楽したこと」になるんだろうか・・?

そこには、「俺たちは汗水かいて少ない給料で頑張っているんだ、だからお前も少ない給料で必死に働け!」という意識があるのではないかと思うのです。
「お前だけ儲けやがって!」
つまりは嫉妬ですね。


ついでに言うと、フリーターやニートに対してこういうことを言う人にも同じような意識が存在しているのではないでしょうか。(フリーターなんて企業側の雇用の問題なのに・・・)

もちろん、IT企業は社員の労働環境が相当に厳しいらしいので、突き詰めていけばもっと重大な問題がありそうではあるけど。

そもそも、社員みんなが幸せに働くことのできる会社をつくる、そういった労働環境をつくるには、どうするべきなのだろう。
「嫉妬社会である日本」と「この国の労働環境」とを照らし合わせて思案してみて、僕の興味はそこに向かっていきました。

テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

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