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星新一 「未来いそっぷ」

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新潮文庫(ほ 4-26)

出版社:新潮社
ISBN:4-10-109826-3
発行:1982/08

『アリとキリギリス』『ウサギとカメ』など、誰でもごぞんじの寓話の世界。語りつがれてきた寓話も、星新一の手にかかると、ビックリ驚く大革命。時代が変れば話も変るとはいえ、古典的な物語をこんなふうに改作してしまっていいものかどうか、ちょっぴり気になりますが―。表題作など、愉しい笑いと痛烈な風刺で別世界へご案内するショート・ショート33編。




最近ブログに本の感想を書くことが少なくなってしまいました。
読書はしてはいるのです。
もっぱら大学の勉強のために読んでいる新書などばかりですが・・・。
今テスト期間真っ最中で試験の対策にレポート執筆にとかなり追い込まれているので、どうも小説を読むような気分になれないんですよね^^;

しかし、星さんのショートショートは読んでいます。
やっぱりちょっとした時間に読めるのがいいですね。


「未来いそっぷ」とはなんぞやというと、本書にははじめに「いそっぷ村の繁栄」というテーマで7つのお話が収められており、「アリとキリギリス」「北風と太陽」「オオカミ少年」などの誰もが知っているお話を星さんが彼独自の視点でもってアレンジし直しているのです。
「もしも星新一がいそっぷ物語を描いたら」みたいな作品ですね。
といっても、イソップの作品以外にも沢山のショートショートが収められており、その中には今まで出会わなかったような新しい魅力を持った作品もありました。


ひとつは「ある夜の物語」という作品。
星新一の作品は、世の中や人間社会、現代社会への皮肉に満ちた作品や、奇想天外なアイデアで作者を楽しませる作品など、いくつかのタイプがあるのですが、この作品は僕にとっては新しい星さんの一面を見ることのできた作品でした。

舞台はクリスマス、サンタがプレゼントをしようといろいろと恵まれない人のところを巡るわけですが・・・・、なんというか、暖かい作品なのです。
社会や人間の風刺が描かれている作品が好きな僕にとっては、な〜んか星新一らしくないよなぁと思ってしまったのは事実ですが、こういう作品もありっちゃあありかな。

もう一作、かなり変わっているのが「不在の日」という作品。
登場人物が自分たちだけでお話を作り出そうとするという奇妙なショートショート。というより分量的にはほとんど短編小説かな。タイトルの「不在」というのは、作者が不在っていう意味ですね。

作者が話を展開してくれないから、じゃあ自分でなんとかしてやろうみたいな話です。人々が求める「小説」に対する批判だったり、あるいは作家の星さんに対する不満などを登場人物が言ったりもしています。
あらすじがあるわけではないので、あーだこーだやっている感があって正直結構退屈ではありますが、逆説的なことに作家星新一の姿が作品を通して現れてくるようなところもあって、そういう意味では面白い。

最後のまとめかたが僕には結構共感できて、というかそこにしか共感できるところはないんだけど。
最後に登場人物のひとりがこんな台詞を言って終わります。

「現実の世界の人たちは、このごろは大事件がなくてけっこうだと口では言いながらも、実は内心では、事件というものは起こるのが正常な状態だ、と思いこんでいる。起こらないのが異常だと思いこんでいる。そのため、平穏がかえって重荷になり、心の底のほうで妙な不安におびえているのじゃないでしょうか。……」(『未来いそっぷ』:244)



こういう傾向は今の人々の中にも見受けられるのではないでしょうか。
ニュースや新聞を見ながら「まあ嫌だ」、「恐いわねぇ」だとかさかんに悲しそうな表情を浮かべながら嘆いている人なんかその気がありますよね。
僕の周りにもいますが、「そんなに嫌な気分になるんならニュースなんて見なきゃいいのに」とどうしても思ってしまいます。

これはやはりメディアの及ぼす影響が大きいような気がするんですよね。
テレビってニュースでさえも、現実の出来事を飛び越えて執拗に情報を受け取る側の感情を煽ったりしますよね。そしてそれを見て感情を高ぶらせる人がまんまとそれに乗っかると。

僕の言っていることは本の内容からはちょっとずれているかもしれないけれど、最近テレビを見ていてそんなようなことを思ったので。
社会に生きる一人の人間として思うのだけれど、世の中そんなに変わった出来事なんて起こっていないし、毎日凄まじい事件が身近で起こっているなんてナイナイ。
街の雰囲気だって昔と比べて特別暗くもないし、明るくもない。

関係ないけど、テレビに出てくるような奇想天外だったり抜群に面白い人なんてのも滅多に出会うものじゃない。毎日電車に乗っているとブツブツ独り言で文句を言っている人には頻繁に会うけど・・・。

何が言いたいかって言うと、世の中に面白い人や出来事なんか少ししか存在しないし、奇異な出来事だって同じ。大多数は普通の人でそして毎日を同じように過ごしている。ということ。

子どもが親を殺したとか、少年がバスジャックしたとか、そんな事件を余計な視点をまぜこぜにして悲しんだり憤ったりするよりも社会のシステムについて考えることの方が大事だ。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

星新一 「凶夢など30」

 

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新潮文庫(ほ 4-44)

出版社:新潮社
ISBN:4-10-109844-1
発行:1991/12

都会からはなれた小さな入江で出会った老人と新婚の夫婦。その夜、老人が見たのは、新婚の2人が殺しあう夢だった。1年後、老人はまた同じ夢を見た。不思議な夢を気にした老人は、名産品を2人に送って様子をみる。礼状が届き、何事もなかったかと、安心する老人。この繰り返しが、何年も続いたのだが…。
夢想と幻想の交錯する不思議な世界にあなたを誘う夢のプリズム30編。




出会ったばかりのショートショートの世界。
その出会いはつい先日読んだ星新一の「これからの出来事」という作品集でした。
一味違う世界観にどうもなじむことができなかったにもかかわらず、一冊読み終えてみると、またもう1冊読みたくなってしまうのはなぜなんでしょう。

ショートショートは、通学時間やちょっとした時間ができたときに取り出して読むことができるので、生活の中のほどよい息抜きになるのかもしれません。
ほんとに3分くらいあれば、時間が埋められるので心強いです。


さて、今回の作品集は夢や幻想などの不思議なお話を中心にまとめた作品集。
あいもかわらず、頭の悪い僕は読み終わっても「ナンダコレ?」という風で、作品のテーマ(主張)がサッパリわからないことも多々ありましたが、かなり楽しく読めました。

頭の悪い僕でも主張がわかり、なおかつ、「これは面白い」と思えた作品を4つほど選んで紹介します。

ひとつめは『夏の女』という作品。
星新一の世界に触れて間もない僕なのですが、思うに星さんは文章にあまり感情というのを入れずに、どこか冷めたような見方があるように思います。無味無臭で雑菌0%のクリーンな文章とでも言いますかね。
そんな印象があるのですが、この作品にはどこか哀愁が感じられます。
悔やむ気持ちというのが滲み出ているような終わり方が哀愁を帯びています。
他の作品と比べて文体に変化はないのですが、これは別の意味で不思議だ。
第一印象では「味気ない」と思った星新一の文章は、実は何もしていないのではなくて、不思議な魅力が詰められているのかもしれない。そんなことを思いました。


ふたつめは『退屈』。
退屈なときに読んでみてください。
退屈を紛らわすために登場人物が動くさまを読んでいるときっとあなたの退屈もちょっとは解消されるのではないかと思います。
思えば、ショートショートは「退屈」を紛らわすための道具にぴったりですね。


メッセージの痛烈さで言えば、『病名』という作品はかなり的を得たことを描いていると思います。
なんでもかんでも「病名」をつけることで患者を楽にしたり、不幸にしたり。

作品を読んで思い当たったのは、近年問題になっている精神障害の症状についてです。
みなさん自分が何かしらの精神障害を抱えているのではないかと不安になったことはありますか?
僕はあります。実は少しだけ通院したこともあるのですが、それは置いておいて、ためしに「精神障害の種類」をネットで調べてみると、あるわあるわ、いろんな障害。
でも、いろいろ見てみて思うのです。
こんだけ種類があれば、誰だって精神障害者ってことになるじゃねーか!
ってね。

ちょっと視点をずらしますけど、人間って得体の知れないものにことさらレッテルを貼ることでそれを認識して安心感に浸りたいという性質を持っていますよね。きっとそういうことなんだろうな。
この作品を読んでいてそんなところまで考えが行ってしまいました。
これは痛烈な皮肉が込められていて可笑しい作品でした。


さて、星新一が好きな人は彼の残した沢山のショートショートの中で自分だけのお気に入りというのをそれぞれに持っているのだと思いますが、僕にもそんな作品がひとつできました。
『捕獲した生物』という作品。まさにSFといった内容の話です。

宇宙人が一対の地球人をさらって自分たちの星に持ち帰り、動物園にいれて見世物にする。
そこから話が展開していき、あれ、あれ? という間に最終的には、聖書の「創世記」に書かれているアダムとイブの話になっているという、ざっと、こんなお話なのです。

何年か前に読んだカート・ヴォネガットの「タイタンの妖女」が連想されました。
あの作品は、「実は僕たちはどうでもいいもののために生かされている」ということをユーモラスに描き、けれど心温まる素敵な作品に仕上げられていました。

「実はこういうことかもよ?」
という星さんの奇想天外で面白い発想がよく現れている作品だなぁと思います。
ちょっとしたおとぎ話ですよね。でもそれが夢心地で素敵なのです。
「空想だけれど、あったらあったで、それは面白い。いやむしろ本当にそうだったら良いのに。」
というこの感覚。
いままで5、60編読んだ中ではこの作品が今のところ一番好きです。

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

星新一 「これからの出来事」

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新潮文庫(ほ-4-46)

ISBN:4-10-109846-8
発行:1993/11

悪夢だと思いたい、信じられないような出来事。特殊な能力をもった青年の巧妙なビジネス。絶体絶命の危機から目覚めさせてくれる救いの声。満開の桜の季節に出会った秘密好きの美しい女―。
想像もつかないことが現実となってしまう未来社会を、あなたものぞいてみませんか? 技術と文明がもたらす21世紀社会のゆがみを見通して、痛烈な風刺で描きだしたショートショート21編。




最近になって、中学・高校生以来、久しぶりに小説を読み始めた僕は、「ショートショートっていうのがある」ということはなんとなく知っていたものの、それがどんなものかは全く知りませんでした。
ならば、読んでみよう。ということで、たまたま名前を知っていた星新一のショートショートが収められた本を適当に選んで買って、読んでみました。

ショートショートと「ショート」が2回もあるだけあって本当に短い。(そういう意味で良いんですよね・・・)
ひとつの話が大体5ページぐらいしかないんですね。
「これは、通学途中の電車の中や、大学の空き時間に読むのに丁度いい」ということで、手元に置いておいて暇なときにちょっとずつ読みました。


最近、阿刀田高の短編を読むのが好きで、星新一のこの本と併読していたので、どうしてもこちらの本を読むときにも「どんなオチであっといわせてくれるんだろう!?」という期待をもって読んだのですが、そういうものじゃないんですね、ショートショートって。

あんまり「どうなる、どうなる」と推測しながら読むよりも本当に肩肘を張らずに、気楽に、読むような姿勢のほうが良いということに途中で気づいたのですが、それに気づいたのはもうほとんどの作品を読んでからでした・・・。
今NHKで星新一のショートショート作品を映像化したものを深夜とかでちょこっとずつ放送しているんですよね。10分くらいのミニ番組なのですが、それを偶然見たときに、「ああ、そうか、こんな風でいいのか」と気づきました。


星新一自身は「自分の作品が映像化されることはあまり望ましいことではない」というようなことを生前言っていたらしいですが、NHKで放送しているのは僕的にはかなり良いです。
むしろあれを見てこの人の作品の本質がすこしわかった気がしました。いっちょまえなことを言ってしまいましたが、作品の持つ独特の雰囲気というのがよく現れていると思うんですよね。


まるで感情の起伏というものを感じさせない星新一の文体はとても平易で、読みやすいのですが、なにぶん彼の作品への接し方が最初はあまりわからなかったので、どうしてもいまひとつ話の世界に入っていけないもどかしさがあったのですが、だとしても、楽しめる作品はいくつかありました。


たとえば、『安全な生活』というショートショート。

「言葉には出さないけれど、自分の頭の中で考えていること」
これは誰しもが抱えているものですが、実はその中身ってものすごくめちゃくちゃですよね。
もうなんでもかんでもありすぎて言葉にするのすら難しい。もしくは言葉にしたとしても意味すら通らないなんてこともありそうです。意識している部分でもそんな風なのだから、無意識の部分ともなるともっと奇妙だったり、面白かったりするのでしょう。

星新一の作品を読んでいて、この作家はそうした人間の隠れている、意識下にある、ぼやけた物事を作品として表現しているのかな? となんとなく感じたのですが、
この作品はまさにそんな印象を受けました。

危険(事件)を避けて安全を求め続けていた男が、あるとき、外に出ようとすると、あまりに男に避けられたので事件のほうも男に寄り付かなくなってしまった。

というこんな話です。
こんなの実際あるかも・・・・それに気づかないだけで。


一番印象に残ったのは『木の下での修行』という作品。
僕はこの本の中ではこれが一番好きかな。
世の中の原理や法則というのを感じさせてくれる作品です。他の作品も実はそういう意味が込められている話が多いのかもしれない。


最後のほうになってショートショート(星新一)の読み方が少しわかったので、もう1冊読んでみたいです。そういえば、阿刀田さんもショートショートを書いているけど、彼はどんな作品を書いているんだろうか。やっぱりユーモアのあるものが多いんでしょうか、これも読んでみるとしよう。

テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

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